『昭和高座の名人たち』

金子圭三の写真がよい。別役実が可楽について書いているというので買ったのだが、別役の文章も含めて、そのほとんどは写真に添えられた毒にも薬にもならぬ文章である。しかし写真は何百倍もそれぞれの落語家について語っている。金馬とか今輔とか圓生、可楽の写真のように既視感を覚えるものも多いが、それは恐らく、いかに彼らがカメラの前で、あるいは観客の前で「芸人」として同じポーズをとり続けてきたか、ということなのだろう。馬生の若い頃は本当に坊ちゃん坊ちゃんしていたんだな、とか、正蔵や文楽の普段着姿のように、思いもかけぬ姿を見せられて、こちらが当惑することもある。もちろん彼らは芸人たることをやめていないのだけれど、高座にのぼったときとは別種のオーラを漂わせていて、陳腐な言い方だがその「生き様」が見えるようではっとさせられると同時に、何か見てはならないものを見てしまったような気もするのだ。いずれにせよ、これらは正岡容をはじめとする昔の落語家について書かれた文章を読むときはつねに手元において、その写真を参照するためにはもってこいの本である。

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