ミラー/劇団民藝『プライス』

紀伊國屋サザンシアター、7月7日観劇。

ミラー『代価』の日本初演。The Price (1968)はミラーの60年代の作品としてはめずらしく、商業的に成功した作品だった。民藝の上演技術の確かさもあって、見るとたしかに面白い。たんなるDiscussion Playになりがちな60年代70年代のミラーだが、この作品では89歳のユダヤ人古物商Solomonという、うさんくさい、いかにも演劇的な登場人物を舞台に出すことで中盤をもたせることに成功している。議論の途中で急に固ゆで卵を食べ出したり、気分が悪くなるとハーシーのチョコを出してくれと言ったり、観客を笑わせる小芝居は事欠かない。

衣装の前田文子がよい仕事をしている。警官のビクター(西川明)はブルーのシャツに紺のパンツというアメリカの警官の制服、その妻のエスター(河野しずか)が買ったばかりのスーツは薄い赤、ビクターの兄ウォルター(三浦威)は仕立てのよいキャメルのコートを着て登場、上品な三原色の取り合わせが目に心地よい。ウォルターがコートを脱ぐと、イエロー系の取り合わせ。ソロモン(里居正美)は緑系でまとめたうえで、演出の兒玉庸策が絵になるように舞台に配置。

俳優たちの発声も耳に心地よい。昔ふうの新劇と変わらないテーマとか切り口の小劇場劇団が最近増えているが、ここまで気を遣えるところはあまりないから、老舗の腕の確かさにほっとする。

ソロモンは20年代のヴォードヴィルにアクロバットのソロモン・ブラザーズの末っ子として出演していたという設定。Ziegfeld Folliesにも出演していたギャラハーとショーン(Gallagher and Shean)のレコードをビクターたちの父親が遺していったのを見て欣喜雀躍する、ということになっている。ジュディ・ガーランド主演『美人劇場』Ziegfeld Girlにおけるギャラハーとショーンの出演場面はYou Tubeにアップロードされている。Broken Glassにおけるエディ・カンターといい、Millerは(同世代の多くのアメリカ人と同様)ヴォードヴィルが好きだったのだなあ。

ソロモンもウォルターもビクターに感謝するが、それはビクターが思いもよらなかったことである。

ウォルターの造形はうまいな。ビクターの幻想を打ち砕く役割は決してたんなる「敵役」ではない。

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