ヴァン・ホーヴェとかカストルフの演出を見てきた目には松尾スズキの演出はずいぶんおとなしめに映る。作品の改変をあえて禁じ手にする必要はなかったのではないかと思うが、その範囲ではなかなかの出来だった。とりわけブランチの狂気の演出はよい。笑いを狙ってやり過ぎの仕草も多少気になるが、後半の秋山菜津子の演技は追い詰められた者の狂気に迫真性があり、さすがに松尾スズキ、自家薬籠中の演出と膝を打つ。「ブランチは私だ」とウィリアムズは言ったが、松尾にしてみれば「ウィリアムズは私だ」なのだろう。
冒頭で登場するブランチが、白一色ではなく黒い模様入りのブラウスを着ているのはト書きの「白い蛾」をむしろ忠実に表すということだろう。場面転換の暗転中、装置に投影される幻灯が蝟集する蛾の姿を映し出してそのことを強調する。幕切れのブランチのワンピースはト書きのデラ・ロビア・ブルーというよりターコイズブルー。照明との打ち合わせ不足か、予算がなかったのか。また、スタンリーが放り出して壊すラジオが平凡な家具調の茶なのはいただけない。ト書きに白のラジオとあるのはもちろんブランチの象徴だからなのだ。
かくのごとく、サブテキストの読み込みはいったいに甘いが、松尾スズキにそれを求めても仕方がない。とはいえ一方ではテキストに忠実にやろうという気もうかがえ、その踏ん切りのつかなさが不満といえば不満。
小田島恒志の翻訳には疑問が残る。パンフレットのなかで改訳のポイントを自分で説明しているのだが、まずブランチが Stand up と言うのは教師の口癖というのは単純に間違いだろう。アメリカの高校には「起立、礼、着席」はないのだから。それにアメリカ人はベルリーブを気取ってフランス語読みでベルレーブと言うことはないし、そもそもフランス語読みならば鼻に抜けてベル・ンレーブとなる。偉大な父親へのチャチな反抗といったら言い過ぎか?
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松尾スズキ演出「欲望という名の電車」@パルコ劇場、2011年4月12日
ヴァン・ホーヴェとかカストルフの演出を見てきた目には松尾スズキの演出はずいぶんおとなしめに映る。作品の改変をあえて禁じ手にする必要はなかったのではないかと思うが、その範囲ではなかなかの出来だった。とりわけブランチの狂気の演出はよい。笑いを狙ってやり過ぎの仕草も多少気になるが、後半の秋山菜津子の演技は追い詰められた者の狂気に迫真性があり、さすがに松尾スズキ、自家薬籠中の演出と膝を打つ。「ブランチは私だ」とウィリアムズは言ったが、松尾にしてみれば「ウィリアムズは私だ」なのだろう。
冒頭で登場するブランチが、白一色ではなく黒い模様入りのブラウスを着ているのはト書きの「白い蛾」をむしろ忠実に表すということだろう。場面転換の暗転中、装置に投影される幻灯が蝟集する蛾の姿を映し出してそのことを強調する。幕切れのブランチのワンピースはト書きのデラ・ロビア・ブルーというよりターコイズブルー。照明との打ち合わせ不足か、予算がなかったのか。また、スタンリーが放り出して壊すラジオが平凡な家具調の茶なのはいただけない。ト書きに白のラジオとあるのはもちろんブランチの象徴だからなのだ。
かくのごとく、サブテキストの読み込みはいったいに甘いが、松尾スズキにそれを求めても仕方がない。とはいえ一方ではテキストに忠実にやろうという気もうかがえ、その踏ん切りのつかなさが不満といえば不満。
小田島恒志の翻訳には疑問が残る。パンフレットのなかで改訳のポイントを自分で説明しているのだが、まずブランチが Stand up と言うのは教師の口癖というのは単純に間違いだろう。アメリカの高校には「起立、礼、着席」はないのだから。それにアメリカ人はベルリーブを気取ってフランス語読みでベルレーブと言うことはないし、そもそもフランス語読みならば鼻に抜けてベル・ンレーブとなる。偉大な父親へのチャチな反抗といったら言い過ぎか?