「魅惑の美声」第三回公開研究会

「魅惑の美声:近代日本における声と情動に関わる言説構築過程の学際的研究」(サントリー文化財団研究助成「学問の未来を拓く」:研究代表者・日比野啓)は、以下の通り第三回研究会をおこないます。近現代において、人間の「声」はどのように聞かれ、受けとめられてきたのか。理論の整理や事例研究をつみかさねるなかで、現在を照らし返す情動の歴史について議論します。参加ご希望の方は、研究会連絡先までご連絡ください。

日時:7月31日(日) 14:00-18:00
場所:学習院大学 北1号館4階408教室

14:00「声の標準化と「ほんとうの声」」神山彰(明治大学)

美声或いは、悪声という意識はあるが、「普通の声」は意識に上らない。そもそもニュートラルな声というのはあるのだろうか。強いていえば、放送でニュースを伝えるアナウンサーの声は「標準化」されている。逆に、芸人の声は「誇張化」される。また、民謡などでいう「正調」とは、実際には全国的に(特に東京で)受容されやすく「標準化」されたもので、地元のそれは「古調」と言われる。逆に、「訛り」が魅力であり「売物」である演者も、新派、新劇どころか歌舞伎にさえいた。現在の段階で考えていることを、アラカルト風に採り上げたい。

15:00 休憩

15:20 「大衆演劇の声」京谷啓徳(学習院大学)

劇団がひと月ごとに各地の劇場や健康ランドを回る大衆演劇。現在も全国で多くの劇団が活動しています。大衆演劇の劇場で観客は、役者のさまざまな声を体験します。芝居での引き込まれるような台詞回し、歌謡ショウでの役者ならではの雰囲気ある歌声、口上挨拶での愛嬌溢れるしゃべり、そしてまた終演後の送り出しでの親密な会話と、役者のさまざまな声を楽しむことができるのが大衆演劇の魅力なのです。本報告では「大衆演劇の声」の諸相について考えてみたいと思います。

かみやま あきら 1950年生れ。明治大学名誉教授。専門は近代日本演劇。1978年より96年まで国立劇場で、歌舞伎・新派の制作担当。著書に『近代演劇の来歴』『近代演劇の水脈』『近代演劇の脈拍』(森話社)。編著に『忘れられた演劇』『商業演劇の光芒』『興行とパトロン』『演劇とメディアの20世紀』(森話社)。共編著に『河竹黙阿弥集』(新日本古典文学大系明治篇)(岩波書店)、『日本戯曲大事典』(白水社)など。

きょうたに よしのり。1969年生まれ。学習院大学文学部教授。専門は西洋美術史。著書は、『ボルソ・デステとスキファノイア壁画』(中央公論美術出版)、『凱旋門と活人画の風俗史 儚きスペクタクルの力』(講談社選書メチエ)、『もっと知りたいボッティチェッリ』(東京美術)、『西洋美術の歴史第4巻 ルネサンスI』(共著、中央公論新社)、『西洋美術史』(共著、美術出版社)、『浅草オペラ 舞台芸術と娯楽の近代』(共著、森話社)、『ステージ・ショウの時代』(共著、森話社)など。

第3回研究会連絡先:日比野啓(hibinoあっとまーくfh.seikei.ac.jp)

「魅惑の美声」第二回公開研究会

「魅惑の美声:近代日本における声と情動に関わる言説構築過程の学際的研究」(サントリー文化財団研究助成「学問の未来を拓く」:研究代表者・日比野啓)は、以下の通り第二回研究会をおこないます。近現代において、人間の「声」はどのように聞かれ、受けとめられてきたのか。理論の整理や事例研究をつみかさねるなかで、現在を照らし返す情動の歴史について議論します。参加ご希望の方は、研究会連絡先までご連絡ください。

日時:5月29日(日) 14:00-17:40
場所:成蹊大学10号館2階第一中会議室

14:00 「対話を聴くことの不自然さについて」勝田悠紀(東京大学大学院人文社会系研究科)

日本の演劇文化には「対話」の伝統がないとよく言われます。西洋との比較で考えたとき、日本には極端に言うと人と人との対話を聞くことそのものが不自然に感じられるところがあるわけです。その影響は現在でも政治や共同体形成から物語にいたるまで様々な領域で感じ取ることができます。今日のフィクションにおける言語のはたらきを考えたとき、そうしたことはどういう意味を持つかということに興味を抱いてきました。当日もこの問いを具体的な事例を見ながら考えたいと思います。

かつたゆうき。専門は英文学。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程在籍。最近の論考に「距離、あるいはフィクションの恥ずかしさについて」(『エクリヲvol.13』)など。

15:20 休憩

15:30 「美声の聞こえ方」阿部公彦(東京大学文学部)

「美声」とはどのようなものだろう。本研究会では、身体の科学として美声をとらえるアプローチに加え、社会的歴史的な文脈からの考察も行われるが、本発表では「美声の聞こえ方」という視点をとり、美声が発生する場、状況、それを「聞く人」との関係性などについて考察してみたい。
まずは切り口として、文学テクストの中の「美声の状況」を以下のように場合分けしてみた。これらを通覧すると美声を耳にするにあたってどのような「心の構造」が機能しているかが見えてくるのではないかと考える。そのあたり、報告の中では実例を参照しながら考察を深めたい。
1.たまたま出会う。
2.漏れ聞こえる
3.静かにささやいてくる。
4.懐かしい
5.圧倒的で頼もしい。
6.静けさを作り出す。
7.呼びかけてくる。
8.後ろから話しかけてくる。
9.記憶の中から聞こえる。
10.物理的な音として聞こえる。
11. 妄想の中で聞こえる。
12. うるさい。老婆的な世話焼きの声として聞こえる。
13. 高圧的に命令してくる。
14. 大きい声である。

あべまさひこ。1966年生まれ。東京大学文学部教授。英米文学研究。文芸評論。著書は『英詩のわかり方』(研究社)、『小説的思考のススメ』(東京大学出版会)、『幼さという戦略』(朝日選書)、『名作をいじる』(立東舎)、『史上最悪の英語政策』(ひつじ書房)、『100分de名著 夏目漱石スペシャル』(NHK出版)、『理想のリスニング 「人間的モヤモヤ」を聞きとる英語の世界』(東京大学出版会)、『英文学教授が教えたがる名作の英語』(文藝春秋)など啓蒙書のほか、『文学を〈凝視する〉』(岩波書店 サントリー学芸賞受賞)、『善意と悪意の英文学史』(東京大学出版会)、『病んだ言葉 癒やす言葉 生きる言葉』(青土社)など。『フランク・オコナー短篇集』、マラマッド『魔法の樽 他十二編』(ともに岩波文庫)など翻訳もある。オフィシャルウェブサイト

16:50 休憩

17:00 全体討議

第2回研究会連絡先:日比野啓(hibinoあっとまーくfh.seikei.ac.jp)

「魅惑の美声」第一回公開研究会

「魅惑の美声:近代日本における声と情動に関わる言説構築過程の学際的研究」(サントリー文化財団研究助成「学問の未来を拓く」:研究代表者・日比野啓)

以下の通り研究会をおこないます。近現代において、人間の「声」はどのように聞かれ、受けとめられてきたのか。理論の整理や事例研究をつみかさねるなかで、現在を照らし返す情動の歴史について議論します。参加ご希望の方は、研究会連絡先までご連絡ください。

日時:3月22日(火) 14:00-17:40
場所:北九州市立大学北方キャンパス・D-603教室

14:00 「声はいかに語られ、記憶されるか」日比野啓(成蹊大学)

なぜ「人の記憶に残る声」とそうでない声があるのか。認知科学はこれまでどのようにこの問いに答えてきたのか。人文科学は認知科学の成果を踏まえて、どんな新しい知見を加えることができるのか。このような問題意識のもと、今回は予備段階として認知科学で声と記憶について書かれた論文・書籍を渉猟し、メタ分析を行う。

15:20 休憩

15:30 「振り向かせる声の系譜―寿屋CM「浪曲西部劇」に焦点をあてて」真鍋昌賢(北九州市立大学)

行為する声という視点から、前近代の大道・仮設小屋に源流をもつ浪曲の声の力とイメージに注目してみたい。具体的には、寿屋(現:サントリー)の洋酒CM「浪曲西部劇」の位置づけについて考察する。高度経済成長期において、CMという新しい時代の言説形式のなかで浪曲の「いきみ声」(ダミ声)はどのようとりこまれ記号化されたのだろうか。当時の浪曲の「衰退」を背景として考えてみたい。

16:50 休憩

17:00 全体討議

第1回研究会連絡先:真鍋昌賢(文学部比較文化学科:ma7-ma3あっとまーくkitakyu-u.ac.jp)